アニメ魍魎の匣 第十三話「魍魎の匣、あるいは人の事」

色々すごかった・・・。最終回なのでやや長文です。





〈感想〉
怒涛のラスト。ああ、これまでの全ての伏線がガチガチ嵌っていくこの気持ち良さ、爽快感!声優陣の熱の篭った演技もあいまって実にお見事でした。堪らず絶叫する関口先生や、京極堂のサディスティックな表情も良い…。久保が美馬坂に食らい付いて果てている絵の壮絶さも圧巻でした(久保の内面の描写がちと物足りない気もしましたが)。しかしあの花火はどういう意味なんだろう・・・箱館屋上での打ち上げ久保花火。シュールですらあってちょっと笑いそうになって戸惑った。どういう解釈をすれば良いか、考えるのに少し時間が要りそうです。降り注ぐ火の粉が絵としては美しいシーンでした。

●通りもののこと
この作品は、人が自分とは違う・自分には理解できない相手を「病んでる」とか言った言葉で“穢れ”として排除しようとする風潮を糾弾する意図もあったように思います。いや、警鐘を鳴らしたのだろうか。その相手とは、例えば犯罪者です。理解できないなら理解できないで良いのです。理解できちゃマズイ事もあるでしょう。けど「コイツは特別異常なんだ」「自分は狂気とは関係無い」と思い込み、犯罪者の存在を非日常へと追い遣り、そして安心しようとする。関係無い?自分は正常?本当に?正常と異常のの境界線って?本当に普通なの?境界付近は曖昧ですよ?自分の常識は他人の非常識ですよ?殺人は衝動的なものだと京極堂は言います。そして衝動は日常に潜んでいる。「通りものはどこにでも訪れる」という自覚が無い人間が多すぎるのです。

アニメでは描かれなかった、頼子に向けられる私生児差別の目もこの“穢れ”意識の問題なんでしょうね。あの子には父親がいない、自分達と違う、だからあの子はおかしい、だから疎んじて蔑む。低劣な意識です。

●頼子のこと
頼子は普通の娘でした。空想くらいはどこの中二もアン・シャーリーもします。孤独感や疎外感などのコンプレックスも多くの人が抱えているし、絵のモデルに誘われたと思えばちょっと嬉しくもなります。殺人未遂という罪から免れようとするため稚拙な嘘も吐きました。良くない事ではありますが、罪から逃れようとする考え・行為自体は誰もが思いつくごく普通の事です。終始なんだかフワフワした変な雰囲気をかもしていた頼子ですが、小説の彼女の視点は非常に冷静で、自分の立ち居地も弁えていて、感情移入できるキャラになっています。どことなく自分と通じる所もあるのでなんだか頼子の肩を持ちたくなってしまう。だからあの最期はショックでした。

●雨宮のこと
雨宮も至極真っ当なんですよね。少なくとも、箱に入った加菜子を見て須崎を殴り殺すという行為に及ぶまでは。脅迫用に使われない加菜子の残りの手足を自分にくれと言ったのも、考えてみればそれが家族としては当たり前の行為だったのではと思います。だって相模湖で水葬にしてあげようと言うのでなければ、加菜子の手足は焼却炉で他のゴミと一緒に燃やされるところだったのかもしれないのです。手脚に意識は無いから人ではなく物だ、みたいな理屈で美馬坂ならいかにもそうしそうですし。手脚に人の尊厳も何もあったものじゃないと。それよりせめて、加菜子が行きたがっていた湖に連れて行ってあげようと思うのが人情じゃないかと思うのです。倫理観も人それぞれですけど、私だったら雨宮の気持ちの方が分かるなぁ。

「幸せになることは簡単なことなんだ」「人を辞めてしまえばいいのさ」と京極堂は言います。美馬坂が必死になって、というか本当に死んでしまっても手に入れられなかった「幸福」を、あっさりと手に入れてしまった雨宮。満ち足りた表情にどこか凄みを感じる…陽子の告白を聞いた木場の表情といい、ここはアニメならではの魅力だなぁ。電車を使ったアニメ風の演出もすごく良かった。関口は”人”として此岸に踏み止まりました。日常でやらなければならない事があるし、会いたい人もいるだろうし、そういうしがらみから逃れられず、そのうえ自分を引き留めようとする友人がいるから、彼岸に行く事ができない。だから、雨宮が少し羨ましい。私もちょっと羨ましい…。このシーンのお蔭で、不思議と後味が爽やかなんだよなぁ…。大好きなラストです。

●加菜子のこと
彼岸の住人となった雨宮に連れられ行く、加菜子もなんだか超越しています。箱に入れられて何処かへ持ち出されたと思ったら急に箱の蓋が開いて目の前に知らない男が居て自分を見ていたのでにっこり笑いかけて「ほぅ」と言う…。やはりこの娘は女神か天女だったのではないかと疑いたくなります。人間業ではない。この時の加菜子の言葉がなぜ「ほぅ」なのか、これは是非原作を読んで頂きたい。ちょっと切なくなるのです。ところで、アニメでは首から上ばかりが描かれていたので、加菜子や久保が首だけで生きていたと思われがちのようですが、正確には胸から上です。心臓と肺だけは残してある。肺が無けりゃ呼吸が出来ないし心臓が無けりゃ脳に酸素を供給できません。これが「一日くらいは生きている」最低限の臓器…のようです。


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総合感想ぽくしたかったのに全然それっぽくなりませんでした。しかもまだまだ書き足りないような…まぁいいや。何はともあれ1クール楽しませて頂きまして、スタッフの皆様お疲れ様でした!このクオリティなら他のシリーズ作品も見てみたいです。アニメ化するなら何かなぁ、『絡新婦の理』とか結構アニメ向きのビジュアルしてると思うんですけどどうでしょう。房総の名家、美人四姉妹、堅牢な女学校の校舎、敬虔なキリスト教徒のかわいい女学生、七不思議、満開の桜…と画面的に映えそうな要素いっぱいで良いと思う。
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by shougetu16 | 2009-01-01 14:28 | 私的瑣談(雑記)

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